第2回 東京学芸大学附属国際中等教育学校 公開研究会②
―1年生国際教養「まちづくりについて議論しよう!」、国際教養分科会―
ひきつづき、2月19日(土)に行われた公開研究会から「国際教養」の授業と、午後から行われた分科会から「国際教養」についてお伝えします。
授業
11:40~12:30 場所:教室
1年1組 27名(男子11名、女子16名)
学習領域:国際教養 単元:「まちづくり」について議論しよう!(全4時間のうち本時は第4時間目)
授業者:山本勝治 教諭
〈前時までの学習〉
この単元は社会科と連携しており、目標や評価も社会科のそれに対応させています。同時に総合的な学習の時間の目標や、道徳の内容にも該当する学習となっています。単元クエスチョンは、「様々な人々が共生できる住み良い地域社会をつくっていくために必要なことは何か?」です。生徒は6班に分かれ、前時までに大泉学園駅周辺の調査をもとに「まちづくりプラン」を作成し、模造紙1枚に表現しています。本時はその発表と、各プランについての討論を行います。
〈まちづくりプラン発表〉
先生:「今日はこの間の続きを前に貼ってあります。まちづくりプランの発表は3分間で、ベルを鳴らします。質問はわからない言葉についてだけで、内容については後の協議会で質問してください。プラン実現のための「お金」を気にしましたか?実際のまちづくりではどうしているでしょう?募金?「お金をかけてでもやる価値のあるプラン」を出してください。この意味、わかりますか?お金をかけないのでも、実行しないのでもなく、「これだけのことをやれば大泉のまちが良くなる」というプランにしてください。(発表を聞く人は)何を質問したいか・議論したいか、ワークシートにメモしてください。では、始めます。」
みんな:(沈黙)
先生:「手を挙げる班はないの?自分のプランが一番お薦めでなくては。」→たちまち手が挙がりました。
3班:「経済発展の視点から 大泉ビジネス革命プラン」
アウトレット・セール…商店街で知られていない店が連携して、毎月第2土曜日に公民館などでセールをする。広報でお知らせをし、福引券や割引券でリピーターを増やす。
1班:「ボランティアの視点から」
いろいろな人がどのようなボランティアができるか、立場別に考え、理由も付けた。
子ども…挨拶委員会(コミュニケーションのため)、小中学生がお助け農業体験
大人・老人…道路に灰皿・ゴミ箱設置(ポイ捨てを防ぐため)
地域…消防団、さわやかデー(公園で落ち葉掃きをして焼き芋をする)、ホームレスのためにご飯を出す、回覧板式ほうき・ちりとりをつくる
4班:「環境(エコ)の視点から 環境(エコ)プラン」
①街灯にLEDを使う。駅前大型商業ビルの屋上にソーラーパネルを設置し、街灯や店のネオンに利用する。
②路面電車…バス通勤者が多いので、便利でエコにもなる電気路面電車を作る。CO2が出ず、渋滞もつくらない。バスは便の良いように振り向ける。
5班:「様々な世代の視点から 大泉を考えよう」
| 世代 | 大人 | 高齢者 | 子ども・学生 |
| 問題点 | 商店が少ない | 駅の施設がわかりにくい | 通学路が汚い(ごみ、雪ですべる) |
| 改善策 | 土地を設けて店をつくる。区に補助金を出してもらう。 | 表示をわかりやすくする。 | ボランティア活動で、みんなできれいにする。 |
2班:「体の不自由な方の視点から 障がい者のためのまちづくり」
老人ホームみたいに、障がいのある人のためのホームをつくる
6班:「外国人の視点から(海外在住経験の視点から) 大泉の改善策」
地図…少ないので、いろいろな場所に設置
外国語表示…商店街やスーパーに、英語・中国語・韓国語だけでなく、増やす
バス停…多くてわかりにくいので、表示を明らかにする
スクールゾーン…車が危ないので、看板を大きくし、外国語でも表示する
〈まちづくりプラン協議会〉
先生:「では、協議会を始めます。今からがメインです。問題が残るとそのプランは通りません。質問にすぐに答えられない場合はどうしますか?」
男子1:「違うところから考える。」
みんな:「調べる。」「アドリブ。」
先生:「一旦質問を受けましょう。調べますと言うと、『調べていなかったのか』と言われるから、言い方を考えて。では、『どの班に対して』と言ってから質問を1つしてください。」
女子1:「4班に対して。曇りや雨の日は、街灯は点いていないのですか?」
4班:「全てを太陽光発電でまかなうつもりはないので、(従来の電力に)プラスしたと考えてください。」
女子2:「4班に。路面電車は費用がかかるし、今でも道が一杯なのによけい危ないと思います。どこに走らせるのですか?」
4班:(聞きとれませんでした。)
先生:「ドイツの授業でやりましたね。他の班には?」
女子3:「6班に対して。外国語の例が多すぎて、すべて表示すると日本語がわからなくなります。」
6班:「練馬区の中で人口の多い外国人の言語で表示します。」
先生:「4班と6班以外に対して、ありませんか?」
みんな:(不平を言っています。)
先生:「(困って)他の班についても聞きたいでしょう。」
女子4:「5班に。大人の視点で、何のために何の店をつくるのですか?」
5班:「ファミリーレストランとか、大人が入るところ。」
女子4:「ファミレスは今もあります。それなりに繁盛しないと、補助を貰うのに悪いと思います。」
5班:「そう多くないということです。駅から離れたところは、人口の割に商店が少ないから、ニーズもあると思います。」
先生:「どこまでを駅周辺と見るかは、考え方が違うから。他の班にいきましょう。」
女子5:「3班に。これ(アウトレットセール)をやると、まちが汚くなるから人が来なくなります。」
3班:「ボランティアの人たちと手を結んでやります。」
〈他の班と手を組むという考えに紛糾〉
みんな:(口々に意見を言い始めました。)
先生:「ちょっと待って。3班は、問題が出たら1班と手を結ぶということですね。」
男子2:「ごみを拾っても、人が増えるともっとごみが増えます。」(騒然)
女子6:「店の人に責任をもってもらえばいいと思います。」
3班:「これからの課題です。」
〈議論がのびのびした雰囲気に〉
女子7:「1班に。小中学生は、悪い感じの大人の人も助けるのですか?困ったふりをする悪い人がいるかもしれない。」
先生:「仮定の話は置いて、次。」
男子3:「2班に。このホームは一時的に通うものですか、住まわせるものですか?」
2班:「両方です。老人ホームでも両方あるでしょう。」
男子3:「もともと障がいのある人は、治らないので、リハビリは苦痛でしょう。どういう意味の障がいなのかわかりません。言い方が難しいけれど。」
2班:「頭。」
先生:「それはグループで話し合った結論なの?」
2班:「一緒に遊んだりできるホームということです。」
女子8:「2班に。障がい者と普通の人との共生というか、社会に出づらくならないでしょうか?」(感嘆の声)
2班:「ホームで働く人や健常者とも関わりがあるし、今考えたけど、散歩へ行って普通の人と関わる時間を設けたらどうですか?」
先生:「まとめを書くのが宿題です。最後に、外国人の目から見て意見は?」
男子4:「2班に。障がい者のための学校はあるし、そういうところに入れたらいい。大人も年齢に関係なく入れるはずです。」
先生:「今の件は調査が必要だから、また今度。時間です。」
〈授業者のコメント〉
想定していた以上に、意見が多岐にわたり、50分間で整理することができず残念でした。生徒たちは終わった後の休み時間も議論していました。2コマ連続の授業にすべきだったかと思います。
「国際教養」分科会
テーマ:「グローバル社会に生きる国際教養」 13:30~14:15
司会:「ESDをテーマに掲げてまだ2ヵ月です。本日公開の授業の準備からスタートしました。これから、教科とESDとMYPの関わりをより緻密に考えていきたいと思っています。」
質問1:「先生方は相当ミーティングや勉強をしていらっしゃると思いますが、どんなご苦労がありますか?コツなども教えてください。」
回答:「本当に苦労しています。1学年120名の生徒にIBプログラムをしみ込ませるのがいかに大変かわかりました。ミーティング時間はなかなか取れませんが、「情報」「国語」「英語」で連携がはかれた授業があります。昼食の雑談時に偶然話を聞いていたことから、先生同士が隙間の時間をつないで打ち合わせをしたようです。生徒には「テーマが同じ」と、教科ごとに訴えました。生徒は慣れてくると、テーマが共通なので面白がるようになりました。先生同士も時間をつくって、連携する先生の授業を見に行くようにしましたが、3教科合わせるのはかなり大変です。生徒は、先生同士が授業を見合っていることを知って、連携を理解します。」
質問2:「連携をするためのシステムはないということですか?」
回答:「当時は始まったばかりだったので、MYP委員会が作成した年間計画表はありましたが、そのとおりには行かないのが実情でした。」
成田喜一郎 東京学芸大学教職大学院教授のコメント
今日、この場には学校の先生方・研究者の方・企業の方・報道関係など多方面から、国籍も様々な方々が居合わせていらっしゃいますが、この場こそがESDの場・国際教養の場です。その違和感を、まず大事にしていただきたいと思います。
1時間目の古家先生の授業で、教室の前面に「自分に何ができるか」と貼ってありました。本質的な問い・レベルの高い問いがあるからこそ、全ての教科がつながることができます。MYPとESDのプログラムは同じですね。本校の教育は30年前から脈々とESDとつながっていました。MYPだけ謳ってもいいし、現実に問いをしていれば標榜しなくてもいい。教育活動とはそういうものです。
ホリスティックな教育で論理的な思考や表現力が求められていますが、直感やひらめき・感性的なものが求められる教科とどうつなぐかが課題です。
取材を終えて
「まちづくり」授業は、地域社会のいろいろな人々の立場にたって考え、プレゼンテーションをし、議論して調整する学習です。学校の仲間に海外生活経験者や外国人が大勢いることが、立場の異なる人々の存在を現実のものにしているようです。調査した事実に基づいて考え、発表し、議論する過程では、先生がきめ細かなアドバイスをしておられるのがわかりました。次の時間には、多様な人々が共生するより良い「まちづくり」に向けて、さらに議論を進めプランの調整が行われるのでしょう。これらの学習は、法的なものの考え方や社会参画する力を身につける基礎になると思います。3年生の授業を見た後で、1年生の授業を見ると、これから先の2年間の国際教養教育の成果が実感できるように思いました。
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